道案内に慣れることが2020年からの大学入試の記述問題対策になる

皆さんは以前、こんなニュースがあったことを覚えているでしょうか?

千葉県の県立高校入試に関する2004年、今から13年も前の話です。

 

二月に千葉県で実施された県立高入試で、「国語」に受験生の約半数がまったく得点できないという異例の設問があったことが二十日分かった。※出典:Yahoo!ニュース – 社会 – 産経新聞(2004年2月)

 

ではどんな問題なのか。

インターネットで調べることができました。

あなたも挑戦してみてください。

 

問題文:次の説明を読み、あとの問いに答えなさい。

ある晴れた日に、あなたが散歩に出かけたとします。
ちょうど略図の◎の地点を通りかかったとき、自転車に乗ったおじいさんから、略図の中の「公民館」までの道を尋ねられました。
おじいさんは、近隣地区から、孫のピアノの発表会の会場へ向かうところだということです。
略図Aの道は距離は短いですが、途中に急な上り坂があります。
一方、略図Bの道は平らで走りやすいですが、目的地まではAの道の約二倍の距離があります。

 

e0006194_11313425
問い

あなたはこのおじいさんに、AまたはBの道順をどのように説明しますか。次の(1)、(2)について、指示にしたがって答えなさい。

(1)A・Bどちらかの道を選ぶにあたって、まずおじいさんがどのような様子なのか、あなたが次のア~エのうちから一つ仮定して、その符号を書きなさい。
ア 急いでいるようだ。
イ 体力がなさそうだ。
ウ とても元気そうだ。
エ 発表会までは時間の余裕がありそうだ。

(2)A・Bどちらかの道を選び、その道順についての説明を、次の注意事項にしたがって書きなさい。
なお、どちらの道を選んでも、そのこと自体は採点に影響しません。

(注意事項)
① (1)でおじいさんの様子について仮定しましたが、あなたが、そのおじいさんにどのような配慮をしているのかがわかるように書くこと。
② 字数は、百五十字以上、二百字以内(句読点やかぎかっこも字数に数える。)とすること。

 

どうだったでしょうか?

 

設問は散歩の途中、おじいさんに出会ったとの想定で、公民館までの道を尋ねられ、急な上り坂のあるAの道か、平らなBの道を選び道案内を作文で書かせる内容。

実は設問(1)に関してはどれを選んでもよいそうです。

そのうえで設問(2)で、(1)で選んだ選択肢を踏まえてどのような適切な判断を自らおこなうか、を問うことが目的だったようです。

 

 

当時の新聞記事を扱ったブログなどを読むと、

この問題の正答率はわずか14%。しかも約半数の46%が0点だった、ということで当時はかなりセンセーショナルに取り上げられたようです。

中には、

「何度も書き直しているうちに時間切れとなってしまい、泣き出す生徒もいた

 

という状況だったようです。

 

この問題の何が難しかったのでしょう。

 

恐らく統一的な正解はないはずです。
問題文に「どちらの道を選んでも、そのこと自体は採点に影響しません」とある通り、この問題の目的はA、Bどちらかの道を正しく選ぶことではありません。

道はどちらでもよく、それを設問(1)で選んだ自分の判断に基づいて仮説を立てて、設問(2)で論拠を持ってどちらかの道を選ぶのかを説明することで、仮説構築に基づいた問題解決力を問われているのだと思います。
 

そして、競技オリエンテーリング経験者の私からすると、この問題で問われていることは

オリエンテーリングをおこなっている最中の頭の中そのままだなと思いました。

 

どういうことかと言うと、この問題では、おじいさんの状況を推察した上でどのような案内をしたらよいか問われている訳ですが、
たとえば、

「おじいさん=自分自身」と置き換えるとわかりやすいです。

まず、地図を見て、「近い道だけれども急な上り坂」と「平らだけれども遠回り」の行き方が2つあることを確認するでしょう。

そのうえで、

自分がいまどういう状況か?ということを考えるでしょう。

⇒ 自分の体力や走力はどうか?急な上り坂でも登り切れる体力があるか?

あるいは、多少遠回りでも走りやすい道をゆっくりでも進んだ方が早いか?

 

 

そして自己判断して、進むべきルートを決めます。

そこに誰にでも共通する統一的な正解なんてない。「一番早くたどり着ける」ことが最大の目的ですから、

人によっては急な坂を上った方が早いでしょうし、別な人だったらなだらかな道を全速力で走った方が早いこともあるでしょう。

 

「足が早ければ必ず勝てるわけではない」というのがオリエンテーリングの鉄則であり、面白いところです。

 

地図を見ながら前を進むということは「自分に道案内している」ことと同じ。

 

すなわち、「なるべく早く目的地にたどり着く」という目的のために

 

①地図に描かれている情報を読み取り、

②自分の現在の体力や気力の状況を踏まえて、状況判断をし、

③自分にとって最適だと思われるルート選択をする

ということが通常、オリエンテーリングでおこなわれる行為な訳です。

今回の高校入試の場合は、

・おじいさんの状況 ※これも設問(1)で自分で選択

・目的地までの2つの道のいずれかを選ぶそれぞれのメリット・デメリット

といった複数の情報を総合的に判断し、おじいさんにとって適切な道案内をすることが求められていたわけですから、モノゴトの判断の順番としては、オリエンテーリングの思考に極めて近かった、と言えると思います。

 

■この問題は、「道案内が新しい大学入試対策に直結する」ことを証明した

 

2020年から新しい大学入試では、こうした問題が出ることはむしろ、当たり前になりそうです。

 

この2004年の高校入試の出題意図を千葉県の教育委員会では、

「世の中でよくある場面設定であるとし、『判断力、思考力、表現力の三つ』を問うもの」と説明したそうです。

 

まさにまさに、2020年からの新しい大学入試で問われる「思考力」「判断力」「表現力」を道案内で問いたのが2004年のこの千葉県の高校入試問題だったのです。

 

ということは、この問題は道案内に慣れることが2020年からの新しい大学入試制度対策に直結していることを証明したようなものです。

 

 

2020年からの大学入試では、記述式の問題が増えるそうです。

そこで問われるのは、

課題に対して、「自分の意見を、論拠を持ってわかりやすく説明する力」

だとするならば、道案内はこの力を伸ばす身近な方法と言えるでしょう。

 

 

オリエンテーリングは「地図とコンパスで自らを道案内しながら、前に進む」スポーツ。

大学入試の論述問題対策として、幼いころからオリエンテーリングと地図読みに慣れ親しむことの重要性が今後増していくような気がしてなりません。

, , , , ,

Post navigation

折江 晃

ワークショップデザイナー/オリエンテーリング・インストラクタ 自称:地図育アドバイザー(45歳・男性) 1972年生東京都出身・在住。明治大学政治経済学部卒業。小学生の女児・男児の父親。 小学4年生のときに、競技オリエンテーリングに出会い、運動は苦手でも、地図の読解力、判断力、忍耐力などを発揮することで好成績を残せる点に魅了され、高校時代まで続ける。大学卒業後、広告会社に就職。長年マーケティング業務にたずさわる中で、競技オリエンテーリングで培った「自分で考えて行動する力」がビジネスや人生に応用できることを実感する。この経験を自身の子育てに活かすために、地図を通じて「自分で考えて行動する力」を育むオリジナルメソッド『地図育』を開発。現在は、「一人でも多くの子ども達に、自分の人生を自分で切り開く楽しさを実感して欲しい」という思いで、地図育アドバイザーとして、地図育講座・ワークショップを主宰している。 連絡先:contact@mappower.jp

コメントを残す