「方向オンチの科学ー迷いやすい人・迷いにくい人はどこが違う?」
(新垣紀子・野島久雄共著・ブルーバックス)
という本を読みました。
2001年に発刊された少し古い本で、多少インターネット環境に関する記事は少し前のものでしたが、本質的な部分に関してはまったく色あせていない、とても新鮮な内容でした。
著者の新垣紀子さんは、大坂大学大学院で物性物理学を学んだ後、NTT入社後、研究所で人のナビゲーション過程の研究をおこなってきた、ということ。
もう一人の野島久雄さんは、東京大学大学院で社会心理学を専攻された後、やはりNTTに入社し、社会心理学、認知科学の枠組みを研究されている、ということ。
経歴は執筆当時なので、現在は変わられていると思いますが、いずれにしろ、大学でしっかりと学ばれてNTTでもしっかりと研究をされている方のようです。
この本の一番のポイントは、「方向オンチは生まれつきのものではない」ということ。
よく男女の差だとか、「私は方向オンチだから」と自ら言う人もいます。
ただし本書では男女の差はあるかもしれないがそれがはっきりと言えるかどうかは明確ではないと、具体的な実験を踏まえ本書では説明しています。
それよりもお二人が明言しているのは
街を歩くことは技術
ということ。
すなわち街の中の移動することは、
人がさまざまな情報源を活用しながらおこなう問題解決の一種
であり、
迷うことは、生まれつきの性格などではない
のだと。
まさにその通りだと思います。
この本でも触れられていますが、人は歩く時に、
・自分にとって必要な情報を見出し、
・記憶し、
・自分の頭の中で地図を思い描いて進んでいく。
これが普段我々が地図を使って歩く頭の中のプロセスであり、
同時に、日常生活に存在する諸問題に対する取り組み方もまさにこのプロセスと同じだと思うのです。
そして筆者のお二人は「自分自身を高く評価すること」を最後にアドバイスしています。
「私は方向オンチだから」と
勝手にラベル付けしてしまい、自らの成長を阻害することに警鐘を鳴らしています。
街の中を歩くことは技術であり、その技術はちょっとした心構えと事前の準備で身に付けるもの。
それさえあれば、自分を必要以上に過少評価することもなくなる、と説いています。
とても共感できました。
ちょっとした技術を身に付ければ、問題解決につながり、それが自信にもつながる。
これは単に街歩きだけのことではない。生き方すべてに共通することだと感じました。
そうしたことを繰り返していけばきっと人生は豊かになるような気がしました。
方向オンチを治す、ということ以上に、
地図を使って歩くことが自尊心を高め、よりよい人生を送れるヒントを得られることをこの本から感じることが出来ました。