このコラムでは何度も触れていますが、2020年から大学入試制度が大きく変わる予定です。
これまで比重が置かれていた知識量を問う問題だけでなく、知識に基づいて考えを深める「思考力」「判断力「表現力」の有無を問う試験になる、というのです。
別に教科書を読んで覚える勉強が否定される訳ではありません。
ただ、それだけでは足らない、という話なのです。
得た知識を元に、「なぜなんだろう」「どうしてなんだろう」と考えを深め、自分なりの考えを導き出し、それをきちんと人に伝える能力、
これが新しい大学入試制度に求められる能力なのです。
困ったことに、新しく求められる「思考力」「判断力」「表現力」は、直前の夏休みの短期集中講座くらいでは身につかないでしょう。
なぜならば、「なぜ?」と思考を深める探究心や、人に上手に伝える表現力は、日々の生活の中で積み重ねていくうちに「思考の癖」として徐々に染み付いていくものだからです。
ではどうしたら良いでしょう?
国語や算数のように何かドリルを一冊仕上げるのとは違う気がします。
しかも日々の生活の中での積み重ねとなれば「楽しさ」も無ければ子ども達自身も継続できないでしょう。
そこでオススメしているのが、「地図の力を借りて、子どもの『考える力』を伸ばす」ということなのです。
別に地理の勉強を頑張りましょう、と言っているのではありません。
一つのきっかけとなりそうなのがオリエンテーリング、というスポーツです。
「えっ、オリエンテーリングってスポーツなの?」という声が聞こえてきそうですが、実はオリエンテーリングは北欧生まれの個人競技スポーツ。
北欧では、毎年、世界選手権も開かれていたり、1万人を集める大会が開かれたり、かなりメジャーな存在です。
私がこのオリエンテーリングに出会っのが小学4年生。
それから高校2年生までの8年間、学校のクラブ活動としてオリエンテーリングに携わってきました。
だからこそ、オリエンテーリングの奥深さは理解しているつもりです。
初めての土地で、地図とコンパスだけを持って指定されたチェックポイントを回ってくる。
チェックポイントは道なりになんて置いていない。
道から大きく外れた山中にあるので、地図に描かれた等高線による地形の変化や植林の茂り具合、人工特徴物などの情報を手掛かりになります。
例えばこんな感じです。
あなたなら2番から3番までどうやって行きますか?
「何となく」はありえません。100%道に迷うでしょう。
自分で地図に描かれた情報を読み取りながらチェックポイントまでのルートを走りながらプランニングする。
でもそこにはやはり当たりはずれがある。
もし道に迷ってしまったら、自分の現在いる場所を地図から探し出して、またチェックポイントまでのルートをプランニングし直す。
こんなことを繰り返しながら、なるべく短い時間で全てのチェックポイントを順番にまわって戻ってくる。そしてその所要時間で他の人との順位が決まる。
これが競技としてのオリエンテーリングです。
少し競技オリエンテーリングの説明が長くなってしまいましたが、
オリエンテーリングには、
・自分で地図から情報を読み取る
→思考力
・どうやったら一番早くチェックポイントにたどり着けるが考える
→判断力
・途中の「どこをどう曲がるか」という情報を繋げて、一つのルートとする
→表現力
といった、2020年の大学入試対策に生きる要素が詰まっているのです。
3つ目の「表現力」、なぜ「どこを曲がるか」という情報を繋げて一つのルールにすることが「表現力」に繋がるのか?と思う方もいるでしょう。
この場合の「表現力」とはわかりやすく説明できる「説明力」のことを指しています。
一人で地図を見て目的地までのルートを考える、ということは「自分自身に道案内する」のと同じこと。
自分自身に説明が出来ずに何となく目的地に向かっているのだとしたら、山中で迷う可能性が高まりますし、もしかしたら、危険な目に遭うかもしれません。
だからこそ、根拠を持って自分自身が進むルートを自分に説明出来る「表現力」がオリエンテーリングには必要。
そして、オリエンテーリングの最大の魅力は「楽しい」こと。
自分で考えて、足を進めた末に、思い通りの場所にチェックポイントの目印を発見した時の快感はたまりません。
まるで、パズルで手に持っていたピースがバシッと音を立ててハマったような感覚です。
子どもにしたら、宝探しに近いでしょうね。
このように、地図を通して楽しみながら体験をくり返すことで、2020年からの大学入試に必要な「思考の癖」が身に付けられるオリエンテーリングの持つ力
私はこれを「地図の力」と呼んでいます。
この「地図の力」の価値を多くの方に共感してもらい、広げていきたい。
それが私の想いです。
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